今回はオーバーオールのNFBを掛けてみることにします。
NF量はアンプの入力感度とも関係がありますが、本機は前回製作したQUAD22型のプリアンプと組合わせて使
う予定のものです。
このプリアンプは3mV入力で出力が0.66Vあり比較的増幅度を抑えた設計としています。
ですので、このパワーアンプの入力感度は0.6V前後になるようにNFBを設定したいと思います。
アナログ再生ではパワーアンプの感度を上げ、プリアンプ側の増幅度を抑えた方がトータル的なS/N比は良くな
ります。
そうしますと、大体12dB程のNFBを掛ければ良いことになります。
下図(青線)はNF抵抗を2KΩとしNFBを11.3dB程掛けた時の特性です。
高域は70KHzを中心に約1.4dB程のやや危うい盛り上がりを見せました。 後はダラ下がりで変なピークも全
く見当たりませんでした。
低域は元の裸特性が良く無いので無理に持ち上げている感も無いワケではありませんが、最終的にこの辺りで
纏めるのが無難かと思われます。
低域は10Hz以降はダラ下がりでピークはありませんが、高域の位相補正につきましてはまずNFBにコンデンサ
をパラうことで対処することにします。
と言うことで、高域の微分補正は最終的に680pのコンデンサを抱かせたところで纏めました。
それ以外の補正は行っておりませんが大変素直な特性となっていますので多分大丈夫でしょう。
波形観測は後ほど行います。
この結果から、10Hz~60KHz(-1dB)とワイドレンジなアンプとなりました(下図青線参照)。
次にNFB後の入出力特性を見てみます。
クリップ直前の最大出力は9.9Wで、この時の入力感度は0.49Vとなりました。
この時の波形は上下とも良く揃っており殆ど同時クリップでした。
飽和最大出力は約13Wでこの時の入力感度は0.6Vとなりまずまずです。
前述の通り、このアンプのNFBは11.3dBとなっており、これにカソードNF4.1dBが加わりますのでトータルで
15.4dBのNFBが掛っていることになります。
オリジナルQUADⅡの20dB越えのNFBには遠く及びませんでした。 高NFBはノイズに対しては間違いなく有
利になりますが、現代の出力トランスを用いてここまではどうかなとは思います。
以上の結果から、本機は10Wのアンプと言うことにします。
残留雑音はプッシュにしては少し多く0.44mV(入力ショート)となりました。
これは初段の6SH7のヒーターハムの影響が出ているもので、予想以上にこの球はノイズが多くバラつきも大き
いようです。 前段の4本の6SH7を差し替えますとノイズの量が大幅に変わります。
最良の状態に持ってきて0.44mVでしたので、これ以上を望む場合は更に球を選別するなり、あるいはヒーター
の直流点火しかありません。
以上、左チャンネルのみの測定結果を示しましたが右チャンネルも殆ど同じ結果が得られました。
さて、次回はこのアンプの波形観測、温度測定等、安定度についての確認を行う予定です。