以前、70年代初期の古い国産半導体アンプを修理し、仮試聴したところ意外な程良い音が出てきてオヤッと思
ったことがある。
何分古いアンプなので、当時の部品は入手困難なものが多く代替品採用となるのだが、今となってはこの代替品
も無く更にその代替品を使うようになってしまうのはどうにも仕方ないことである。
オーナーの方には依然と同じ音にはならないことを予め伝えて修理後引き渡したものであるが、その際に試聴に
立ち会ったところやはり今までに聴いたことのないような音が出てきて、これにはオーナーの方も驚きで大変気に
入って頂き、その後もずっと使っているとのことでした。
70年代初期のアンプと言えば所謂、純コンプリメンタリーの全段直結OCL回路が一般的であり、当時はアマチュ
アもメーカーもこぞってこの回路を採用していましたが、この回路の元になったのがJBLのアンプである。
JBLと言えば一般的にはスピーカーメーカーの印象が強いですが、個人的にはアンプメーカーとしての印象の方
が強い。
何しろ高価なアンプで当時の一般家庭で購入出来るような代物では無く、 ただ雑誌には写真と美辞麗句が並び
ベタ褒め状態ではありましたがその音も聞いたことが無ければ現物も見たことが無いという状況でした。
前述のアンプは失礼ながら期待もしてなかっただけに意外な音が出てきたことが頭にずっと残っており、それなら
ばオリジナルのJBLのアンプはどうなのか、一度試作して検証してみたいという気になりました。
JBLのアンプで有名なのが代表的なプリメインのSA600、そのパワーアンプ部を独立させたSE400Sとプリの
SG520とがある。 さすがに50年近くの前のアンプがどうなのかと思って調べますと、今でも評価は高いよう
で中古市場でもかなり高価な金額で取引されているようです。
JBLのスピーカーにはJBLのアンプでと言うわけでジャズ喫茶店等でも使われておりますが、古いアンプなので
その維持も大変なものだろうと思う。
そこで今回はSE400Sのパワーアンプを試作してみることにしますが、この回路の特徴は・・・
1) 純コンプリメンタリーSEPP構成で、3段ダーリントン回路はT型サーキットと呼ばれていた。
2) 差動2段構成である。
3) 反転アンプ構成である。
4) 全段直結OCL回路である。
この内、SA600(SA660)、SE400S(SE408S)が反転アンプであると言うことが今では一番の特徴となるか
も知れない。
多分、現在では反転増幅型アンプは知る限り市販されては無いと思われる。
この反転増幅はオペアンプでは良く使用される回路ですが、パワーアンプにディスクリートで使われたのはJBL
のT型サーキット位かも知れない。
と言うことで、計画だけは頭の中で進行していましたが古いアンプですので部品をどうするかということで、今とな
ってはオリジナルのトランジスタも入手も限りなく不可能に近いですので、ここは無理して入手しても今後のメンテ
のこともありますので現行製品で纏めることにします。 当然ながら音は変わりますがオリジナルの音も分らず
ですので、ここでは回路の良さというか反転アンプの特徴位は出せるのではないかと期待している。
そうこうしている内に使えそうな古い電源トランスとジャンクの放熱器が入手出来ましたので早速製作に掛りまし
た。
基板は感光基板を使いましたのでパターンの設計以外は楽に出来ました。
これを放熱器に取付けてパワーユニットとして一体化させました。
ケースはどうするかと言うのがありますが、試作ですので市販のボンネットケースを使って安直に済ませました。
半導体アンプは穴明け箇所も少ないのでシャーシー加工は比較的楽です。
シャーシー加工後、一部部品を載せてみました。
今回はオリジナルに無い回路としてスピーカーの保護回路を設けてある。
音質への影響を考えて保護回路を省略することもありますが、要するに気になるならスピーカー破損の危険を承
知することですが、ここでは僅かな音質の差より安全を取ったということだけです。