千葉県成田市伊能地区に元禄時代から伝わる郷土芸能の「伊能歌舞伎」が市内の大栄公民館ホール
で公演されるということで行ってきました。
成田市伊能は千葉県の北北東部に位置し、東京からのアクセスは少々不便ですが、伊能歌舞伎とは
所謂、農民歌舞伎と呼ばれるもので地域の方々が演じる歌舞伎の総称を指し、成田を代表する地芝
居として成田市指定無形民族文化財として指定され定期的に上演されているものなのです。
地元の方々が長い間守り受け継いでこられた伝統文化でもありますので、どのようなものか興味の
あったものです。
今回の演目は三番叟に続き、お馴染みの『伽蘿先代萩(めいぼく せんだいはぎ)御殿の場・床下
の場』です。
『伽蘿先代萩』は、伊達騒動を題材とした人形浄瑠璃および歌舞伎の演目で通称「先代萩」と呼ば
れるものです。
奥州の足利家の執権(しっけん)仁木弾正(にっきだんじょう)や妹八汐(やしお)らが、足利家
の乗っ取りを企む物語です。
乳母政岡(まさおか)が自らの子千松(せんまつ)を犠牲にして、悪人一派から幼い主君鶴千代
(つるちよ)を守る御殿の場です。
千松が出てきます。 お菓子を取って食べて、残りを蹴散らす場面です。
子役が出るのでかわいくて楽しいですが、自分が毒菓子を食べて主君鶴千代を守ったのです。
武士の忠義がテーマになっており、子供を犠牲にしても忠義を保つと言う現代でも理解し難い話で
はありますが、歌舞伎では良く見られるこのような武士の悲哀が語り草ともなっているものと思わ
れます。
次の演目は鎌倉三代記(絹川村閉居の場)です。 「鎌三」(かまさん)の通称で知られるもので
す。
鎌倉時代末期、当時の将軍である「源頼家(みなもとの よりいえ)」と、時の執権「北条時政
(ほうじょう ときまさ)」との京、鎌倉に分かれての勢力争いが舞台です。
主人公は、「三浦之助義村(みうらのすけ よしむら)」という侍になります。
三浦之助の登場シーンです。
三浦之助は、京方(きょうがた)、源頼家に味方する家来です。非常な忠臣で強い上に 恋人がい
ます。 敵方の大将、北条時政の一人娘の、「時姫(ときひめ)」です。
田舎のあばら屋で三浦之助の母長門(ながと)を看病する時姫のもとに、負傷した三浦之助が戦
場から帰り「自分と夫婦になりたかったら父時政を討て」と時姫に言います。父への孝と許婚への想いとの板ばさみに苦しみながらも父を討つことを決意する場面が時姫の大き
な見せ場となっています。
ストーリーとしては良く知られる内容となっていますが、これをどのように演じるかがポイントと
なります。
何しろそこはアマチュアですから大変だったろうと思います。
しかし、その舞台は大道具・衣装と共に大変立派で予想以上のもので中々のもので十分楽しめまし
た。
長いセリフもきちんと覚えておられたようで、それだけでも大変なものだったと思われます。
それよりも古い伝統芸能を継続していくことは想像以上の苦労があるはずで、古い文化を大事にし
ない国は世界からも尊敬される国にはならないという現実からも継続は大事なことだと思います。
調べますとこのような歌舞伎は全国にも幾つか残っているようです。
大変立派な舞台でしたので、市内中心部でも上演してもっと多くの観客に見て頂いた方が良いので
はないかと思いました。