Quad22 イコライザーの製作も前回で終わったように思われますが、まだまだこの話には続きがあ
ります。
さすがに10回以上に渡り話も長くなりましたので、ここから先は個人の忘備録としますので番外編とし
ます。
何しろシールド無しのトランスでQuad22のイコライザーを作ろうと言う暴挙に出ましたのでそうは
簡単には問屋が卸してくれないようです。
電磁シールド付のトランス使っても似たようなことが起きますが、記事的にも読んで参考になるのは本機
の製作例の方だろうと思われます。
前回までで誘導ノイズ対策は十分と思われましたが、実はラインケーブル、フォノケーブルを接続します
と誘導ノイズがまだ出てくるのです。
これは普通に相手側の機器に問題が無ければ、製作した本機側に問題があることになります。
この手のケーブルノイズは多かれ少なかれ発生することがありますが、普通は気にならない程度で問題に
ならなかったりします。
大体、この種の原因としてはアースの引き回しに問題がある場合が多いようです。
(ACケーブルのノイズ)
今回はこのケーブル類のノイズに加え、何とACケーブルに誘導ノイズが乗ってきました。
ACケーブルの引き回しによってはかなりノイズが大きくなったり、ケーブルを束ねてみますと今度は磁
界の打消しが行われるようでノイズが減少したりして不安定です。
ノイズは無いと思っていたのはたまたまの話だったようです。
こうなるとACケーブルに2芯シールド線を使いたくなりますが、そのようなケースは見たこともありま
せんし、シールド付の電源ケーブルがあるのかどうかも知りません。
このACケーブル接続用に3Pコネクターを使っていますが、アース配線が未結線でしたので試しにこれ
を接続してみます。 こんなものでもシールド代わりになるだろうと試してみますと確かに減りますが完
全ではありません。
しかし、これから分かることは間違いなく本体側に原因があると言うことです。
そこでAC配線が怪しくなりますが、電源トランスから3Pコネクターの配線の長さは僅かに15cmし
かありません。
この僅か15cmでノイズが乗るのも不思議な気がしますが、違いがあるとすると今回はシャーシーが狭
くなったこともあっていつもと違ってAC配線の引き回しを変えていることです。
普通はシャーシーの端の方で束ねるのですが、今回はヒーター電源基板とFET電源基板の間で底板に這
わせてACケーブルを3Pコネクターに接続しました。
こうすると最短15cmで接続出来ることと同じ電源基板ラインなので問題は無いだろうと思っておりま
したが...やはり甘かった。
試しに、いつもの通りのACケーブルの引き回し配線をケースの端で行ってみます。
底板側は狭いので上側のフレームコーナーに密着させる形でバインドで固定してみました。
すると何とこれが見事にノイズは消えるのです。
ACケーブルは勿論のこと、ラインケーブルもフォノケーブルにもノイズが乗ってきません。
どんなにケーブルの引き回しを行ってもビクともしません。
僅か15cmと舐めて掛かったのが間違いの元だったと言うワケです。
このACノイズはFET電源基板が拾っていたものと思われます。
この僅かなACケーブルですが、更にシールド編組チューブか銅箔テープを巻いてシールドしておけば良
いと思いますが、2本のケーブルを良く撚るだけでも十分効果がありました。
プリアンプでは電源ケーブルとて甘く見てはいけないのです。
(ケースアースの不備)
それにしても誘導を受け易いことにも問題があるように思います。
そこで、もう一度ケースアースを疑ってみることにします。
シャーシーの接続部のアースがまだまだ不完全である可能性が高いと見ましたので、再度調べてみまし
た。
やはり、僅かに抵抗値を持って接続されている箇所が幾つか見つかりました。
どうしてもアルマイトメッキが施されたアルミ板は接触不良になり易いようです。
と言うことで、接続部のメッキを剥がして更に菊座金を噛ましてネジ止めを行いました。
シャーシーのどの部位も完全に接続されていることを確認し通電してチェックしますと、誘導ノイズは受
け難くなり且つ大変大人しくなりました。
これは自作ケースでは勿論ですが、完成品のケースでも稀に見られる事項です。
要するに接触部のメッキとか塗装は完全に剥がすということです。
(球ノイズ)
アンプ自体のノイズが減少してきますと、僅かなノイズも気になるようになります。
初段のEF86(6267)は最近良い物が無くなってきました。 それにつけても価格も上昇し入手の
難しい球の一つになってきたようです。
ムラードが良いとかGECが良いとか英国製の球で無ければと言う方はそれでも買うかも知れませんが、
そこまでの球とも思っておりませんので取りあえずノイズ優先で選別しています。
テスラの球も比較的良く、どれもノイズは少なくプリアンプ用として十分使えることが分かりました。
で、問題は12AU7の方です。
どうもこの球はノイズの多い物があるのであまり好きではありません。
12AU7は最初から高信頼管の6189か5814の中から選別して使うつもりでした。
幾つか取り替えてみますと、やはり12AU7よりは6189の方が良いようです。
最終的にノイズの少ないものを選んでみましたが、EF86を交換するよりこちらを交換した方が全体の
SN比は良くなるようでした。
これらの処置により前回より更に球ノイズは減り低雑音になりました。
次に手を打つところがあるとすれば各段の球のプレート負荷抵抗だろうと思いますが、これは現在まで抵
抗ノイズらしきものは確認されていませんので問題は無いと思われます。
この負荷抵抗は低ノイズの酸金やモールド抵抗を用いた方が無難です。
と言うことでノイズ対策はこれで終了となります。
もう多極管を使ったQuad22としては、この辺りが限界かなと言う感じのノイズレベルには仕上がっ
たように思います。
さてパワーアンプで「リップル」や「ハム」で苦労するという話もありましたが、これは基本的に電源部
でリップルを最少にする必要があります。
特に直熱管を使ってシングルで超ローノイズにするのは容易ではありません。
旧来からの手法を使って「リップル」や「ハム」を何とかしようとしても限度はあります。
最近はネットを見ていましても色々と工夫されているようで面白いです。
また、アースポイントにつきましても何処にどう落としたら良いのか専門誌を読んでも不明なことも多い
です。
トランスの配置や配線の引き回し、特にアース配線が大事ですが、これらのノウハウはプリアンプの製作
の中から得られたりします。
と言うことで、以下は個人の忘備録で製作時の記録です。
最後に、連続運転を行い異常の有無を必ず確認します。
更に各部の温度を測定して正常範囲内かどうか、長期安定動作が可能かどうかを調べておきます。
性能もそうですが、何よりも電気製品としての安全動作が第一です。
今回はFET電源があまりに具合が良かったのでパワーアンプにも応用したいと言うことで、次回は手持
ちのアンプの改造を予定しています。