今回はTechnics ST-8080(80T)の修理です。
BGM用に使いたくなったので中古で購入したものです。
今の時代にFM放送はどうなのかとも思いますが、たまに聴くと結構これが良いんですね。
放送とは送りっ放しとも言い、CD等を取り替えることなく流して聴くには実に具合がいい。
そんなことで気楽に聴けるもので良いので、オーディオ全盛期頃の中級機程度のジャンク品を直して使っ
てみようと言うワケです。
FMチューナーは今の現行品のものよりバリコン式のものの方が良く、昔ながらのダイヤルを廻すレトロ
な使い勝手も良いものです。
このTechnics ST-8080(80T)は1977年頃の製品です。
この頃はFMチューナーも沢山出回っておりましたが、試聴出来るFM局は都区内でも2局程度でダイヤ
ル板の目盛りの幅に対しガラガラ状態でした。 混信の心配なんて...およそ考えることも無かった。
FM雑誌もあったりしてFMエアチェック(既に死語)がオーディオソースとして賑わった割には寂しい
状態で割高感の高いモノと言う印象でした。
FM局の乱立を考慮してか高性能チューナーも作られましたが、この当時乱立したのはFM局ではなく作
られたチューナーの製品の数々の方でした。
その中でもチューナーと言えば数ある中でもトリオ(ケンウッド)と相場も決まっていた状態で、現在で
も中古市場では変わらない人気を誇っているようです。
テクニクスのチューナーも悪くは無く、かなりの高級機種も出しておりました。
その中で4連バリコンの中級クラスにあたるものがこのST-8080(80T)で、当時の定価で5万円程度のもの
です。
デザインはグッドデザイン賞を受けており中々のものですが、サイズ的には今となってはかなり大きめ
(450W×140H×367D mm)となっています。
本機の購入理由は単純に安価だったからだけで、ジャンク理由はパネルの照明が点かない、受信感度が低
いと言うものです。
年数的にも40年近い前のものですから普通に経年劣化したものでしょう。
それでは内部を見てみます。
外観の割には内部はスカスカで、メイン基板が1枚とフロントエンド部の基板に電源部となっていまし
た。
底面部からの内部状態です。
修理内容は普通にオーバーホールとなります。
切れたダイヤル目盛り照明用のランプ他、劣化部品を交換を行いました。
ランプはヒューズ管タイプの横長のものが使われており、今では入手は困難ですので普通の砲弾型のもの
を改造して付けるかLEDに換装するかです。 本機はオリジナルを尊重して取付部を改造して市販の
豆電球を使って見ました。 ステレオ表示用ランプの方は麦球を使用しました。
音声出力段にはオペアンプのJRC4558Dが使われておりました。
今更、4558と言うことも無いので、ここではICソケットを使い数ある4558のファミリーICを
手軽に交換して使えるようにしてみました。
アンテナ出力は75ΩのFコネクターが使えない昔ながらのケーブル直付け式でしたので端子板ごと新規
製作してFコネクターが使えるようにしました。 写真は修理後の内部状態です。
これだけの作業ですが照明ランプは復活し、受信感度は特に調整することも無く上がり、シグナルメータ
ーは大きく振れる様になりましたのでこのままでも使えそうです。
外観は40年近くも前の製品とは思えない位に状態が復旧しました。
照明ランプが復活しますとその存在感が強く感じられるようになります。
障子越しの明かりのような柔らかい間接照明は何となく日本的な印象を与えます。
FMチューナは音質より薄暗くした部屋で夜間静かにBGMとして聴くのが良く、雰囲気も楽しむにはこ
のような昔のアナログチューナーの方が良いのです。
さて、価格帯からしてフロントパネルはプラスチックだろうと思っていたら何とこれがダイキャストで出
来ていました。
このような処がグッドデザインの選定理由なのかも知れません。
フロントのガラスは3mm厚程あるものでフロントのパネルにはめ込まれており、これはどう見ても外れ
そうになく割れた場合はガラスだけの交換は難しそうです。
さて、使い勝手の方はBGM用としては十分で、音質はあまり期待もしていなかったのですが細めの繊細
な感じはするものの意外と悪くはない。
ダイヤル目盛りも指針と良く合っており、感度もまずまずでしたのでこのままでも十分使えます...と
言うか、アナログだからと言う理由なのか暫くぶりに聴くFMが具合良くプログラムによってはハッと
することがあり、もう少し上位機種はどうなのか欲が出てきてしまいそうな感じにさえさせてくれます。
どうやら暫くはこれで問題なく楽しめそうです。