今回はカセットデッキの修理です。
いまどきカセットとか思われるかも知れませんが、これがどうしてまだまだ需要があるのです。
まず、カラオケ用途の他ダンスの練習用等があります。 カラオケと言えば、そう「演歌」です。
演歌を購入される人たちというのは、自分で歌うということを目的で購入される方も多いようで、練習用
にフレーズを繰り返し聴く操作をするのですが、この作業はCDやMDよりもテープの方がやり易いからだと
か。
楽器の練習にはデジタルの方が便利だと思っていると、これが演歌となると少々事情が違うようです。
演歌はアーティストによってはCDとテープの売り上げの割合が五分五分だったりするそうです。
磁気テープを使った記録メディアには音楽・映像用だけでなく、コンピューターのデータ保存用の需要が
あるそうで、磁気テープは持ち運びが簡単で、他の記録メディアに比べコストが安く、目的のデータを探
す時間は遅くなるが、大量のデータを移し替えるスピードは速く停電でもデータは失われないなどの特性
があることが再評価されているそうです。
今、数が少なくなったダブルカセットに至っては、日本伝統芸能の歌舞伎、能、日本舞踊、狂言、文楽、
舞台芸能、雅楽等で欠かせないそうです。
これも踊りの稽古をする際にCDやMDやIpodなどではほんの一秒程度の巻戻しや早送りに大変不便
でカセットテープの動作が一番有利だからとか。
日本伝統芸能を守る為にカセットが未だに使われているとは予想もつかない話です。
そのような背景からでしょうか、カセット機器の修理やテープのデジタル化等の話を良く聞きます。
そんなカセットデッキも今のものより古い物の方が作りも良かったりします。
特にバブル時代に作られた所謂バブルデッキが良く、今でも修理すれば十分使えるものが沢山あります。
と言うことで、SONYのTC-K222ESLが今回の修理品です。
本機は91年製のワンウェイ3ヘッド方式のデッキです。
当時の定価で5万円台の中級クラスのものです。
不具合内容はテープがプレイ状態にならず停止状態に戻ってしまうと言うもので、普通にゴムベルトの伸
び、ヘタリがある年数なりの症状を示しています。
早速、中身を見てみます。
デッキのメカ部が右上に見えます。
デッキメカ部を本体から取り外します。
キャプスタンベルトの点検です。
やはり、伸び・ヘタリがあります。
ヘッド部が持ち上がらず停止状態に戻るのは、この小さなモードベルトの伝達能力が低下した場合になり
ます。
このベルトは見た目以上に酷く、完全に伸び切っています。
さて、これらの交換ですが...そうは簡単にはいかない。
ベルト交換には基本的にメカ部の全分解が必要です。
かなり小さな部品も使われており、紛失し易く誰でも容易に出来るものでは...無いですよ。
このあたりの分解整備方法は諸先輩方が述べておりますのでここでは省略しますが、交換部品の割には手
間はそれなりに掛かりますし、これでうまく行くかどうかもケースバイケースで一概に言えません。
ですが、ベルトは年数なりの劣化は必ずありますので、この年代のものが一度も交換していなければどの
みち交換することにはなるでしょう。
と言うことで2本のベルト交換終了後、動作チェックを行います。
プレイボタンで普通にプレイ状態に入るようになり音声も出力されるようになりました。
特にベルト以外に不具合は無かったようです。
録音も出来ることを確認し修理は完了となります。
これで問題なく暫く使えるようになります。
以前はエアチェックやアナログ・レコードを録音して個人で楽しむ手段はカセットもしくはオープンテー
プしかありませんでしたですから、まだまだ古いテープを沢山持っている方が多いかも知れません。
でも、そのままでは勿体無い話ですね。
このカセットテープには場所をとるとは言え、タイトルが書かれていれば何を録音したものなのかがすぐ
に見て分かると言う、要するに探すのに機械を操作しなくて良いと言うメリットもあるそうで、何とも言
われなければ分からない話に妙に納得してしまうのです。