自作アンプにおいて音の良いダイオードとしてショットキーバリアダイオード(SBD)があります。
このショットキーバリアダイオードは高電圧が望めず真空管アンプ用には長年諦めていました。
SBDをシリーズ接続で高耐圧化したオーディオ用の製品もありますが大変高価なのです。
ところが昨年あたりから、高耐圧・大電流回路に最適な次世代半導体のSiC(シリコンカーバイド)材料
を用いたショットキーバリアダイオードが発売されたと言う情報がありました。
これは高耐圧化、高効率、ゼロリカバリ、高速・低損失、低発熱で放熱器を削減可能といった、従来のシ
リコンショットキーダイオードより優れた特徴を持っており省エネの切り札とも言われています。
オーディオ用の整流ダイオードとして使う場合、音に関係するパラメーターというのは損失より「逆回復
時間」と「逆方向漏れ電流」が大きいようです。
また電流容量の大きい物ほど低域までスピーカーをドライブする力が大きいとも言われていますが、何
分、新しいデバイスですのでまだまだ未知の部分が多いようです。
現在では数社の製品が比較的安価で購入できますが、オーディオ専用に作られた製品はまだ出回ってはい
ないようです。
と言うことで、取りあえず価格も安くなったSicSBDを購入してみました。
ロー●の製品でSCS105KGC(写真左)とSCS106AGC(写真右)です。
それぞれ、1200V・5Aと600V・6Aのダイオードです。
発熱は真空管のB電源用途では多くはありませんが、高圧タイプですのでフルモールド仕様の方が良かっ
たのですが。
早速、前回のイコライザーにSCS106AGCを4個、ブリッジで使ってみます。
さて、使ってみた感じでは、まずノイズがはっきりと減少するのが分かります。
既にクオードタイプとしては限界と思われた程のローノイズに仕上がっていますが、何と更にノイズが下
がるのです。
まだまだ、あれでもダイオードノイズが混じっていたと言うワケです。
ノイズの質も大人しく大変静かなものになりました。
この時点で既に音質に何等かの変化が生じていることが分かります。
音楽再生時では重心が少し下がったように思われます。
現状でも音質に不満はありませんでしたが、静かになった分ボリュームが少し上げられるようになりまし
た。
オーディオは何をしても音質は変わると言いますが、これはもう少し聴きこまないと分かりませんが少な
くとも好ましい方向には変化があるようです。
SBDはヒーターの整流にも使ってみたいところです。
これに気を良くして手持ちのパワーアンプにもSCS105KGCと換装してみました。
やはり同じでノイズが下がります。 これも元々残留ノイズの少ないアンプですが、スピーカーに耳を当
ててもノイズの質も変わり大人しくなっていることが分かります。
音質はイコライザーと同じように重心が下がるように思われます。
今回のSicSBDは特にオーディオ用に開発されたものではありませんが、それでもこのように何等か
の変化が確認出来ますから、今後のSicSBDの製品に更なる期待をしたいと思っています。
さて、Sicにはまだ出回っておりませんがパワーMOSFETもあるようです。
これらでFET電源を作ったらどうなるのか、何となく期待が持てそうです。
まだまだ真空管アンプは進化しているのです。